第2話:なめられているコーチを、子供たちは知っている

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プロサッカーの世界では、監督が変わった途端に結果が変わることがある。

昨季まで優勝争いをしていたチームが、監督交代を機に急失速する。逆に低迷していたチームが、新監督の下で生まれ変わったように勝ち始める。戦術が変わったわけでも、選手が変わったわけでもない。ただ、「誰がチームを率いているか」が変わっただけで、結果が変わる。

それはジュニアユースも同じだ。


「Eコーチって、何年生まれなんだろ」

練習帰りの車の中で、Kの母親がぽつりと言った。

「大学生じゃないの。うちの子より10歳くらい上かな」

父親が答えた。

「なんか頼りないよね。先週の試合も、あの交代どういう意図だったんだろって思って」

「俺もそう思った。あそこはもう少し我慢すべきだったよな」

後部座席で、Kは窓の外を見ていた。

何も言わなかった。ただ、聞いていた。


翌日の練習。Eコーチがボードを持って戦術を説明している。

「ビルドアップの時、ボランチはここに立って——」

Kはコーチの声を聞きながら、昨日の車の中での会話を思い出していた。

(頼りない、か)

コーチの説明は続いている。悪いことは言っていない。むしろ理にかなっている部分もある。ただKの中で、その言葉がどこか遠くから聞こえてくる感じがした。

とりあえず、言われた通りにやっておこう。

それだけだった。


Kだけじゃない。

保護者同士の会話は、思いのほか子供たちに届いている。「Eコーチって、どうなの」「あの采配は疑問だよね」「若いから仕方ないけど」。グラウンドの隅で交わされるその言葉が、子供たちの耳に入り、じわじわと染み込んでいく。

コーチを「Eくん」と呼ぶ保護者がいる。コーチが保護者に深々と頭を下げている場面を、子供たちは見ている。

誰もコーチに反発しない。表面上は指示に従う。ただそこに、敬意も信頼も感謝もない。「とりあえずこなす」だけだ。

コーチの言葉が、半分しか届いていない。


結果は、じわじわと出てくる。

指示を「こなす」だけだから、自分で考えなくなる。うまくいかない時に「コーチのせい」にしやすくなるから、自分の課題として受け取れなくなる。練習の密度が下がり、個人としてもチームとしても上達が鈍くなる。

そして負け始める。

「やっぱりEコーチじゃ勝てないわよね」

保護者の間でその声が出始める。子供たちもその空気を感じ取る。コーチへの信頼はさらに下がる。

誰も悪意を持っていない。コーチは一生懸命やっている。保護者も子供の成長を願っている。選手たちも、サッカーが嫌いになったわけじゃない。

ただ、ある日Kはこう言った。

「なんか最近、練習行くのめんどくさいんだよね」

理由は、うまく言葉にできなかった。

目次

グラウンドの外から、筆者が思うこと

以下は、指導者経験と保護者経験の両方を持つ筆者の個人的な見解です。正解は一つではないと思っていますが、参考になれば。

コーチへの不満を家で話すのって、そんなにダメなの?

ダメというより、子供が聞いているということを意識してほしいんです。夫婦間の会話のつもりでも、後部座席に子供がいる。リビングでの話を、子供は聞いている。「あのコーチはどうなんだろう」という会話が積み重なると、子供の中でじわじわとコーチへの見方が変わっていく。意図していなくても、信頼を削いでしまっている。

でも実際にコーチに疑問を感じることはある。それも言っちゃいけないの?

疑問を持つこと自体は自然なことだと思います。ただ、その疑問を子供に話すのか、コーチに直接話すのか、で全然違う。子供に話しても何も解決しない。むしろ子供が板挟みになるだけです。疑問があるならコーチに直接聞く。「先週の試合の交代の意図を聞いてもいいですか」と。それだけでコーチも「ちゃんと見ている保護者だ」と受け取ります。

コーチを「○○くん」って呼ぶのはさすがにまずい?

個人的にはまずいと思っています。子供の前では特に。コーチが年下であっても、グラウンドでは指導者です。保護者がコーチを「くん」付けで呼んでいる場面を子供が見たら、「あ、コーチはそういう立場なんだ」と思ってしまう。呼び方一つで、子供のコーチへの見方が変わります。

コーチが保護者に敬語を使っているのも問題?

これは難しくて、コーチ側の話なので保護者がどうこうできる話ではないんですが。ただ、コーチが保護者に深々と頭を下げている場面を子供が見ると、力関係を読み取ってしまう。できればコーチと保護者がフラットに話せる関係が理想ですが、そのためには保護者側も「指導はコーチに任せている」という態度を示すことが大事だと思います。

じゃあ保護者はコーチに何も言えないの?

そんなことはないです。安全管理がずさん、報連相ができていない、選手の健康管理がおかしい。そういうことはちゃんと言うべきです。ただ「戦術がどうか」「采配がどうか」はコーチの領域。そこは信頼して任せる、というスタンスが結果的に子供のためになると思っています。

結局、保護者にできることって何?

コーチを家で「くん」付けで呼ばない。疑問はコーチに直接話す。家でコーチの批評をしない。それだけで全然違うと思います。難しいことじゃないんですが、意識していないとやってしまいがちで。

子供はグラウンドでも家でも、全部見ています。全部聞いています。保護者がコーチを信頼している姿を見せることが、子供がコーチの言葉をちゃんと受け取るための、一番の土台になると思っています。

登場する人物・団体はすべてフィクションです。でも、完全な作り話でもないかもしれません。

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この記事を書いた人

教員免許(中高保健体育)を持つ40代の元サッカー指導者。自身もトレセンにひっかかるくらいには経験があり、大学ではサッカーの試合における”流れ”をテーマに研究。息子がジュニアユースでプレーしたことをきっかけに、首都圏のJ下部・街クラブ・中高サッカーを徹底調査。その備忘録として本メディアを開設。

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